世に棲む音楽:タイトルの由来

「世に棲む音楽」というイベントタイトルは、精神科医で文筆家だった中井久夫さんの「世に棲む患者」から来ています。

その本の中で中井さんは、「人は意外な行き先を持っている」ということを書いていました。自分が新しい何かに向かって行動範囲を拡げる時、慣れたテリトリーから同心円のように徐々に広がるのではなく、うずまき形を描きながら、飛び飛びに足取りを伸ばしてゆく。そうして、その人をよく知る周りにとっても思いがけない行き先のひとつやふたつ、その人は持つようになるのだ、とのことです。

中井さんはこれを自分の患者さんとのやりとりの中で見つけたこととして書いているのですが、読んでいて僕は「これって、僕らにも言えることだなあ」と思いました。例えば、知らない音楽や映画を求めてライブハウスや映画館に行く時。新しい作品を見つけたいのと同時にどこか、今までの自分(と他人から思われているもの)とは違う景色の中に自分を置いてみたいという気持ちもあるのではないでしょうか。今回の僕のイベントは、そんな気持ちで新しいアイデアや音に触れてみようとする方を特に歓迎したいと思っています。

そう思った理由のひとつには、元学校というHOME/WORK VILLAGEのロケーションがあるかもしれません。施設の他の部屋が目的に合わせて丁寧にリフォームされているのに対して、会場となる304教室はただ一部屋、学校そのままの内装と備品が残されています。実は最初に下見をした時、「同心円的」に自分を拡げてゆくことができなかった自身の学生生徒時代を思い出して、ちょっと困惑しました。しかしすぐに、ここが新しい試みや、主流から外れたって構わないアイデアの容れ物になるかもと思うと、がぜん楽しみになってきました。イベントの時刻は、放課後というには遅すぎる普通の夜。1階のお店でテイクアウトした食べ物飲み物を教室に持ち込むのもOKですし、イベントの終わりはできるだけ飲食店のラストオーダーよりも前にして、楽に「寄り道」できるようにしたいと思っています。

もうひとつ。普段の僕のトークでは参加者に「どんどん質問してください!」と強調しているのですが、今回はそれと共に、自分から話したり質問することにそれほど積極的ではない方も、ちゃんと居場所を持てるように進めたいと思っています。僕自身もトークを聞いた瞬間に内容を整理し質問するのは得意でなくて、だいたい帰り道くらいで「ああ、こんなこと聞いておけばよかった」と思いつくタイプだし、自分はアノニマスな立場のまま他人が話しているのを聞くだけでよいとか、さらには、リラックスして音楽だけ聴きたいという気持ちでイベントに出かけることもあります。「世に棲む音楽」は、そんなモードの方にもOKなイベントにしたいと思っています。そのために毎回、ライブパートの選曲や流れにも工夫をこらすつもりです。

参加に際して事前に知りたいことがあれば、Peatixのイベントページに問い合わせフォームがありますので、どうぞ活用してください。……それか、とりあえずフラっといらしてください。このイベントがみなさんにとって良い「うずまきの行き先」となるように、工夫してまいります。

エマーソン北村の「世に棲む音楽」Peatix イベントページ(ご予約)
https://yonisumu1008.peatix.com
イベントの詳細はこちら、エマーソン北村ウェブサイトでもどうぞ
https://www.emersonkitamura.com