COVID-19闘病日記 (5) Long COVID

COVID-19闘病日記の(1)から(4)を公開したのが、2022年の2月。ありがたいことにたくさんの感想をいただいて、自分的にもCOVIDのことは一段落かなと思い始めた3月、気候が暖かくなるのと逆行するように、僕と連れ合いに(特に連れ合いに)いくつか体の不調が現われてきた。ひとつひとつは重くはないが、細かいできごとが予期せぬタイミングで相次いで起こり、日によっては結構つらい。そのどこまでが昨年夏のCOVIDに起因するのかも分からず、う〜んと思いながら海外のニュース*を見ていたら、まさにそのような因果関係のはっきりしない、でもCOVID感染前の自分とは明らかに違う種類の不調を体験する人が、実はかなりの数にのぼっているということが伝えられていた。そのような症状を指すためにLong COVIDという言葉が通用するまでになっているようだ。国際的に広く認められた定義はまだなく、あえて日本語に訳すなら「後遺症」ということになるのだろうけど、感染から半年以上経った今でも予想外の不調に悩まされる、何だかじくじくした気持ちをLong COVIDという言葉はぴったり言い当てているように感じるので、今回の投稿にはその言葉を使わせてもらおうと思う。

「始まり」と「終わり」があった(1)から(4)までの闘病記と違って、最近経験していることを現時点で正しく評価することは、自分にはまったくできない。とりあえず、自分達のためのメモという目的で、この間に起こった・起こっている僕と連れ合いの不調を、時系列でリストアップしておこうと思う。

2021年12月(連れ合い)
ある日外から帰ると寒気をもよおし、熱を測ったら39℃近くあった。その数日前から下痢っぽい感じもあった。解熱剤を飲んで寝たら熱は翌日には下がった。病院で検査してもらったが、コロナはもちろんインフルエンザ等の感染症でもなく、結局原因はわからなかった。その後、高熱は出ていない。

2022年2月下旬(連れ合い)
帯状疱疹になる。神経に長年潜んでいる水疱瘡ウイルスが活動して、発疹ができる病気。連れ合いは人生において二度帯状疱疹を経験しており、これが三回目。抗ウイルス薬などを飲む。
それとは別に、肩と首が凝って痛いのがずっと続いている。あまり肩こりタイプの人ではなかったのだが。虫歯も進行していて、神経まで達しているかも知れないとのこと。

2022年3月中旬(連れ合い)
区の特定検診の結果、大腸の内視鏡検査が必要なことがわかる。かなり先の予約しか取れず、この投稿の時点では検査はまだ先。下痢ではないが下痢のような感じになることが時々あり、昨年末の発熱もこれと関係があるのかもしれない。

2022年3月下旬(僕)
ステイホームが始まった二年前から何度か腰痛になっており運動不足を痛感していたのだが、この冬からそれが頻繁になってきて、ついに3月下旬にはかなりの状態を体験する。今までの腰痛とは場所も痛さも違っていて、今も日によって程度が変わりながら、かれこれ3週間以上続いている。

2022年3月下旬(僕)
歯ぐきが痛くて、歯の根元が一箇所腫れている。歯科に行くと「神経が死んで、炎症を起こしてます」と言われる。この歯は虫歯でなく、不思議なことに外からの傷が一切ない場所で炎症が起こっている。思い出してみると、昨年9月にCOVIDで入院していた時に、同じ場所が痛んだことがあった。その時はCOVIDそのものの方が大変だったからそのまま忘れていたのだけど、その後も何度か、軽く痛みを感じることがあった。今回我慢できなくなって診てもらったことで初めて、このような状態が見つかった。歯といえばこれとは別に、長年使ってきた金属のかぶせものがポロッととれることが、秋・冬・春にそれぞれ一度ずつあった。歯の、かぶせものを支えている部分が割れていた。

また、昨年から断続的に、僕や連れ合いにはこんなことも起こっている:
抜け毛が多い。収まったかと思うとまた大量に……というのが数週間ごとに繰り返される。
皮膚も荒れて、時々非常にかゆくなる。元々乾燥するタイプなのだがそれとはまったく違うレベル。アトピーの体験はないのだが、かゆい時はかなり赤くなっている。
不眠。夜中に目が覚めて寝られず、朝方までそのまま過ごすことが結構ある。コロナ禍以前に比べたら就寝・起床時刻ははるかに規則正しくなっているのに。
記憶力と疲れについてはうまく評価できないけれど、年齢やストレスによるものとは違う感じの記憶力低下に思い当たる時がある。意外なほど最近のことを、大きくはないが何と言うか「きれいに」忘れていることがある。

最初に記したとおり、このすべてが昨年のCOVIDと関係があるのかどうか、自分にはわからない。しかしこうやってリストにしてみると、「免疫」「神経」「血流の末端」といったキーワードが浮かんでくるような気もするし、発症時にダメージを受けた体の各部分が、冬を越えて春になると共に問題を起こしているように、思えなくもない(もちろん、COVIDに関係あろうとなかろうと、不調の原因をきちんと調べておくことは大切だ)。
確かに言えることは、COVIDに関係すると疑われることでは、感染・発症と同じくその後についても、自分が今までの経験にもとづいて持っている健康と不調に関する「勘」が、まったく役に立たないということだ。普段なら例えば、ちょっと無理をしたから熱が出たなとか、これだけ休んだからそろそろ大丈夫とか、病気について体が記憶していることがあるものだが、僕がウイルスに感染して熱が上がってゆく過程で痛感した通り、その「コース」についての予想はことごとく外れていった。そして感染から半年以上立った今また、僕と連れ合いは、完全回復への出鼻をくじかれたような状態になっている。仕事ができなかったり寝込んだりという程ではないし、本格的な春になって少し収まってきたような気もするのだが、むしろその程度であることが今後の見通しを難しくしていて、何とも言えない気持ちになっている。本当に、ロングだ。

僕が感染したのはデルタだが、この冬に多くの方がオミクロンに感染したことで、ちょっと周りを見ればすぐに感染経験者と出会えるまでに、我々のコロナをめぐる状況は変化してしまった。そして僕が聞いたいくつかの話では、意外に多くの方が、すっきりと健康な状態には戻っていない。特に女性の方に、その割合は多いようだ。このことは、もっと大きく語られても良いのではないだろうか。すでに日本国内でCOVIDに感染した人の累計は六百万人を超えている**のだから。
感染経験者は、感染防止策からこぼれ落ちた「失敗例」では、まったくない。Long COVIDの症状が科学的に解明されてゆくのはこれからなのだろうけど、少なくとも体の不調が「その人次第」の問題で済まされないよう、われわれの体験はもっと「見える」ようになっていいのではないかと思っている。

* 例えば https://www.bbc.com/news/health-57833394
** https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/ による。